バーカウンターの男女 2
日曜の夜にバーへ来た彼女。
ゆっくりとカウンターに腰かけた後、なにかお酒を注文したようだ。
バーに行くときは一人の時間を過ごすことが目的だから、他のお客にほとんど興味が湧かない。
耳に入ってくるシェイカーを振る音も、バーテンダーとお客との会話も、客同士の会話も、立派なBGM。
流れていたのは知っているけれど、何が流れていたかは知らない。そんな感じ。
丸い氷とウィスキーが混ざり合って、徐々に変わっていくグラスの中のお酒の味を、ゆっくりと味わうのが好き。
ぼくはタバコを吸わないけれど、そんなときには漂ってくる鈍色の煙も、時には立派なBGF。
盛り合わせのオリーブを指でつまみながら、次は何を飲もうかとバックバーを見渡す。
あまりお酒は詳しくないから、バーテンダーさんに任せてしまおうかな。
そんなことを考えていると、自然な動きでチェイサーが継ぎ足される。
心地いい、ただただぼーっとするためだけの時間。
日曜日の夜。
そんな時間にバーへ一人で来る女性が、彼の興味を引いたらしい。
「よくここには来られるんですか?」
まるで教科書に書いたようなセリフが聞こえてきた。
へー。また今夜も一つ、出会いが生まれたんだね。
そんなことを思いながら飲んでいると、すぐ隣で始まった男女の会話は、自然と耳に入ってくる。
「主人とケンカして、飛び出してきちゃったんです」
「子供のことで言い合いになって・・・」
「そうなんですかー。お子さんは何人いるんですか?」
うん????
なんかキャッチボールが成り立っていないんじゃないかい?
会話が自然な流れなら、男女の出会いのワンシーンに関心はないから、BGMとして流れていくんだろうけど、
ピアノの演奏を間違えたかのような、ドラムのリズムが急に狂ったかのようなそんな違和感に包まれ、
ぼくはぼーっと出来なくなってしまった。
あーあ。
つづきます。