最後のキスはゆずの味
「レモン?」
「ううん・・・・ゆずだよ」
頭を抱えるように向かい合ってきた女の子は、少しはにかんだ笑顔で言いました。
柑橘系のリップクリームが塗られた唇は、感情こもったキスをします。
受けるぼくは、感情をこめられない受けのキス。
目を合わせたつもりが、視点は少し外したまま。焦点は少しずらしたまま。
100分前とは格段に違う女の子の笑顔と優しさは、
過ごした時間の中でしたぼくの行動に何か原因があったに違いない。
胸を押し付けてくるその仕草が可愛い。
ゆっくりと近付いてくるその顔が優しい。
キスをすると全ての神経がそこに集まった気がするけど、この日の神経はバラバラで。
あなたはにこやかに首を抱えてくる。
ゆっくりとぼくにまたがり、顔を、胸を、下半身を擦り合せてくる。
応えられないその気持ちに、ぼくは戸惑いながら。
池袋の街に消えていったあの子は、元気にしているだろうか。