黄色いソファ
ゆったりと過ごせる、二人だけの時間。
巣鴨の駅を降りて少し歩いたところにあるホテルに入ったぼくたちは、部屋の扉を閉めるとホッと一息。
証明が当たって光っている床を、薄っぺらいスリッパでぺたぺた歩く。
こんな狭い空間なのに、歩くときは手を繋いでいた。
空調の聞いたひんやりした部屋で、繋いだ手だけが温かい。
ふと。
豊かな胸ではなく、優しそうで可愛い胸。
柔らかく茶色に光るキューティクルが映えるその髪。
ほんのりと漂ってくる甘い香り。
ちらりと横目で彼女を見たぼくは、一瞬で抱き締めたくなってしまった。
エスコートとか、雰囲気とか、そんなものはあとでいいじゃないか。
繋いだ手をグッと握って引き寄せると、ゆっくりと女の子を抱き締める。
あ・・・・
微かにそんな声が聞こえた気がするけど、その声を発したかもしれない口はぼくの胸元に。
肩、そして髪の毛を抱き締めて、ゆっくりと立ち尽くす二人。
曲名も分からないBGMが流れる無機質な部屋で、ただただ抱き合うことはなんて心地が良いんだろう。
湧き上がってくる下半身の欲望を味わいながら、頭と上半身と下半身は、それぞれ別の感触を味わっていた。
ただそれだけ。
他にはなにもなくて、ただそれだけ。
そこには牢屋も目隠しもバイブも必要なくて、潮吹きとか強制フェラとかやりたくもなくて、
やらずにいられない事をやるだけ。
ただそれだけ。
1分・・・?
5分・・・・・・?
10分・・・・・・・・・?
アダルトビデオでは必要のない間。
性急に進めなければいけないセックス。
ついつい次の段階へすぐに行こうとしてしまうけれど、優しい体温を味わっていたい。
言葉を交わさず、体温と体温を交換して同化させていたい。
呼吸と呼吸、鼓動と鼓動、一日を終えた体臭と体臭。
そんな、意識しなければ五感に入ってこない微かなものたちを、静かな部屋で味わっている。
ラブシーン。
そんな言葉が似合うのかもしれない。
手順とかセオリーとかオーソドックスとか、そんなものはどうでもよくてさ。
今はこれをとにかく味わっていたいんだ。
卑猥な形をした性器をたっぷり舐め回すとか、
勃起して硬く熱くなったペニスをしゃぶる姿を、快感を味わいながら見下ろすとか、
後の楽しみはあとに取っておいてね。
セックスの始まりはどこからだったろう。
今日の待ち合わせからだろうか。
乾杯!をしたときだったのだろうか。
ホテルに入って抱き締めあったときからだろうか。
ぼんやりとそんなことも考えながら、ゆっくり揺らめくようにぼくたちは抱き合っていた。
ホテルに入ってどれくらいたっただろう。
まだ一言も、言葉を交わしていない。
ふと。ラブホテル特有のソファが目に入った。
次にやりたいことが瞬時に頭に浮かび、女の子の身体を自分の身体をゆっくりと動かしていく。
巣鴨の駅を降りて少し歩いたところにあるホテルに入ったぼくたちは、部屋の扉を閉めるとホッと一息。
証明が当たって光っている床を、薄っぺらいスリッパでぺたぺた歩く。
こんな狭い空間なのに、歩くときは手を繋いでいた。
空調の聞いたひんやりした部屋で、繋いだ手だけが温かい。
ふと。
豊かな胸ではなく、優しそうで可愛い胸。
柔らかく茶色に光るキューティクルが映えるその髪。
ほんのりと漂ってくる甘い香り。
ちらりと横目で彼女を見たぼくは、一瞬で抱き締めたくなってしまった。
エスコートとか、雰囲気とか、そんなものはあとでいいじゃないか。
繋いだ手をグッと握って引き寄せると、ゆっくりと女の子を抱き締める。
あ・・・・
微かにそんな声が聞こえた気がするけど、その声を発したかもしれない口はぼくの胸元に。
肩、そして髪の毛を抱き締めて、ゆっくりと立ち尽くす二人。
曲名も分からないBGMが流れる無機質な部屋で、ただただ抱き合うことはなんて心地が良いんだろう。
湧き上がってくる下半身の欲望を味わいながら、頭と上半身と下半身は、それぞれ別の感触を味わっていた。
ただそれだけ。
他にはなにもなくて、ただそれだけ。
そこには牢屋も目隠しもバイブも必要なくて、潮吹きとか強制フェラとかやりたくもなくて、
やらずにいられない事をやるだけ。
ただそれだけ。
1分・・・?
5分・・・・・・?
10分・・・・・・・・・?
アダルトビデオでは必要のない間。
性急に進めなければいけないセックス。
ついつい次の段階へすぐに行こうとしてしまうけれど、優しい体温を味わっていたい。
言葉を交わさず、体温と体温を交換して同化させていたい。
呼吸と呼吸、鼓動と鼓動、一日を終えた体臭と体臭。
そんな、意識しなければ五感に入ってこない微かなものたちを、静かな部屋で味わっている。
ラブシーン。
そんな言葉が似合うのかもしれない。
手順とかセオリーとかオーソドックスとか、そんなものはどうでもよくてさ。
今はこれをとにかく味わっていたいんだ。
卑猥な形をした性器をたっぷり舐め回すとか、
勃起して硬く熱くなったペニスをしゃぶる姿を、快感を味わいながら見下ろすとか、
後の楽しみはあとに取っておいてね。
セックスの始まりはどこからだったろう。
今日の待ち合わせからだろうか。
乾杯!をしたときだったのだろうか。
ホテルに入って抱き締めあったときからだろうか。
ぼんやりとそんなことも考えながら、ゆっくり揺らめくようにぼくたちは抱き合っていた。
ホテルに入ってどれくらいたっただろう。
まだ一言も、言葉を交わしていない。
ふと。ラブホテル特有のソファが目に入った。
次にやりたいことが瞬時に頭に浮かび、女の子の身体を自分の身体をゆっくりと動かしていく。
バーカウンターの男女 2
日曜の夜にバーへ来た彼女。
ゆっくりとカウンターに腰かけた後、なにかお酒を注文したようだ。
バーに行くときは一人の時間を過ごすことが目的だから、他のお客にほとんど興味が湧かない。
耳に入ってくるシェイカーを振る音も、バーテンダーとお客との会話も、客同士の会話も、立派なBGM。
流れていたのは知っているけれど、何が流れていたかは知らない。そんな感じ。
丸い氷とウィスキーが混ざり合って、徐々に変わっていくグラスの中のお酒の味を、ゆっくりと味わうのが好き。
ぼくはタバコを吸わないけれど、そんなときには漂ってくる鈍色の煙も、時には立派なBGF。
盛り合わせのオリーブを指でつまみながら、次は何を飲もうかとバックバーを見渡す。
あまりお酒は詳しくないから、バーテンダーさんに任せてしまおうかな。
そんなことを考えていると、自然な動きでチェイサーが継ぎ足される。
心地いい、ただただぼーっとするためだけの時間。
日曜日の夜。
そんな時間にバーへ一人で来る女性が、彼の興味を引いたらしい。
「よくここには来られるんですか?」
まるで教科書に書いたようなセリフが聞こえてきた。
へー。また今夜も一つ、出会いが生まれたんだね。
そんなことを思いながら飲んでいると、すぐ隣で始まった男女の会話は、自然と耳に入ってくる。
「主人とケンカして、飛び出してきちゃったんです」
「子供のことで言い合いになって・・・」
「そうなんですかー。お子さんは何人いるんですか?」
うん????
なんかキャッチボールが成り立っていないんじゃないかい?
会話が自然な流れなら、男女の出会いのワンシーンに関心はないから、BGMとして流れていくんだろうけど、
ピアノの演奏を間違えたかのような、ドラムのリズムが急に狂ったかのようなそんな違和感に包まれ、
ぼくはぼーっと出来なくなってしまった。
あーあ。
つづきます。
バーカウンターの男女
カラン・・・・クルクルクル・・・・・
ウィスキーグラスに氷の当たる音がして、透明な丸い球体と琥珀色の液体がゆっくりと混ざり合う。
特に何を見るでもなく、バックバーを見て、ぼーっとしている。
最近はやたらと騒がしいバーが多くなった。いや、そういうバーにしか巡り合えていないのかもしれない。
やたらと話しかけてくるバーテン。時にはギャンブルの話、時には下世話な性の話。
先日いいな、と思って入ったバーはひどくて、落ち着いたお店の中でバーテンが売りである手品を見せながら、
その口上の中でストレートな下ネタをバンバン言っていた。
キャバクラなら許されるのかもしれないその内容は、落ち着いた雰囲気を謳うそのバーには不釣り合いで、
ちょっとした不快感しか感じなかった。
ゆっくり飲みたいときや、話し込みたい相手と訪れたいときに、こんな店は使うことが出来ない。
そんな店にいるのはバーテンダーではなく、バーテンである。
どこかって?
それはグルメサイトに載っています。
適当にそんなことを考えながらウィスキーを飲んでいると、女性が一人でバーに入ってきた。
時間は日曜日の夜10時。
女性が一人で入ってくるのは珍しいことではないから気にしないけど、店内の客層によっては興味の対象となる。
バーのカウンターでのナンパ。
その対象となるから。
ぼくがカウンターの左端に座り、彼女は席を一つ開けて隣に座った。
彼女の一つか二つ隣には、男性が座っていた。
日曜の夜にバーへ来た彼女は、見知らぬ男に挟まれて酒を飲むことになる。
つづきます。